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離婚・無職・住所なし。苦労人なんだ・・・
かと思ったら、収入が億で納税はゼロ?!

佐藤祐介(仮名)は、某大手Y建設会社の下請けとして毎年5,000万円超の工事収入がありながら無申告を貫き、所得税、住民税、果てには健康保険料も払っていませんでした。

住民票の住所に佐藤祐介が住んでおらず、所在がまったくわからなかったので、税務署も長年捕まえることができなかったという事案です。

最終的に佐藤祐介は潜伏先を把握され、億を超える追徴課税がされます。

どのようにして税務署はこの男を捕まえたのか?興味のある方はご覧ください。

事件発覚の切っ掛け

佐藤祐介は無申告だったので、税務署はもともとその存在さえ知りませんでした。

しかし、Y建設会社への税務調査が行われた際、帳簿上には、Y社が佐藤祐介に工事報酬を支払っていることが記載されていました。

税務署は「Y社が佐藤祐介に毎年5,000万円を何年も支払っている」ことをメモし、佐藤祐介がその5,000万円を申告しているかを確認しましたが、結果は無申告でした。

税務署は佐藤祐介の所在を確かめるため、住民票や戸籍を確認しましたが、そこには離婚した妻だけが住んでおり、佐藤祐介は行方不明となっていることがわかりました。

定期的にY社に顔を出していた佐藤祐介は、税務署が動いていることを察知してY社の工事現場から姿を消します。

そこから3年間、税務署は佐藤祐介の足取りを全く掴めないままでした。

脱水症状と闘いながら佐藤祐介を求めて靴を履きつぶす

私がこの調査を担当したのは、この無申告事件を税務署が把握してから3年目でした。

私は初めに、そもそも佐藤祐介は存在しない人間で、Y社が経費を水増しして脱税をしようとしているのではないか?と疑い、Y社に出向きました。

・・・Y社には佐藤祐介が担当した工事現場の記録、10人の部下たちの履歴書があり、Y社の口座から佐藤祐介の口座に工事代金が振り込まれていることもわかりました。

私の疑いは大外れ、Y社の税務処理は正しかった(Y社様ごめんなさい)。

しかし、佐藤祐介とその部下の作業員の履歴書数十枚、佐藤祐介の取引口座を把握することができました。

この日から、数十枚の履歴書に書いてある住所を回って佐藤祐介を探す旅に出ることになりました。

その年の夏は例年にない猛暑でした・・・就職祝いで彼女に買ってもらった靴は無残な姿に。

佐藤祐介がいた・・・しかし手が出せない

確か8人目くらいだったでしょうか、履歴書の住所に行ってみると、表札に佐藤祐介の名前が書かれていました。

後でわかったことですが、佐藤祐介は離婚した後、自分の部下だった作業員の家に住み込んでいたのです。

しかし、手が出せない・・・同姓同名の他人かもしれないし、不用意に接触することで逃げられてしまうことも考えられる。

窓は閉め切っているのですが、電気料金のメーターは勢いよく回っているので、クーラーをつけて家でくつろいでいるのでしょう。

履歴書の写真、パスポートの写真(外務省の情報提供)、銀行の監視カメラを見て、佐藤祐介の顔は頭に叩き込んでいます。

張り込みをして出てくるのを待ちました。

やっと佐藤祐介と対面

結局その日は何も動きはありませんでした。

その翌日から、朝一で様子を見に行って、日中は他の税務調査事案にこなしつつ、夕方からまた佐藤祐介の家に張り込むという日々が続きました。

そして4日目くらいだったでしょうか、中年の男が出てきました。

「佐藤祐介さん」と呼ぶと「あ?なんだよ」というドスのきいた怒りの反応が来たのをはっきりと覚えています(正直怖かった)。

しかし、これでこの男が佐藤祐介だと確定です(佐藤祐介と呼んで振り返ったわけですし)。

私が佐藤祐介の知人、親族、取引先にはすべて聞き込みしているので、税務署に追われていることは知っているはずです。

念のため佐藤祐介であることを再確認し、税務調査であることを伝えたところ、返ってくるのは「税務署は嫌いだから協力しない」の一本槍だけで、会話になりません。

実は、この時点で脱税のカラクリは全て調べがついていました。

そのことを伝えると、仕事が終わり次第税務署に来ることを約束してくれました。

騙されたおかげで調査完了?!

佐藤祐介が税務署に来る時間になっても何の音沙汰もありません。

当然だと思っています。

約束を守る人かどうかは少し話せばわかります。

その後、何度電話をしても出ません。

結局、長い時間をかけて見つけて、やっと税務署に来る約束をしたのに騙されたわけです。

しかし、騙されたことにより税務調査はほぼ完了しました。

なぜ?と思われるかもしれませんが、税務署は、相手がどこに住んでいるか、相手がどれだけ所得を隠しているか、この二点さえ把握すれば、後は更正・決定という行政処分を出すことで無理やりにでも相手に税金を賦課することができるのです。

税務署に税理士を連れてきて、様々な主張を続ければ調査は難航したでしょうが、単に佐藤祐介は逃げただけだったので、悪質な調査非協力という扱いになってしまいました。

佐藤祐介の住所は住民票上は離婚した妻のところにありますが、実際は部下の家に住んでいるので、居所は把握していますし、佐藤祐介の所得は、Y社からの工事収入を合計すれば把握できます。

後は同業者の利益率を国税庁のシステムで調べて、佐藤祐介の収入に当てはめれば、いくらの所得を得ていたのか推測できます。

このように、所得を正確に把握できないのに、合理的な方法で推測して課税する方法を「推計課税」といい、法律で認められた方法です。

結果として、佐藤祐介は、7年間で4億円近い収入を得ていたので、その35%前後の利益率で計算した1億5千万円の所得を隠していたという結論になりました。

本当に恐ろしいのは重加算税と延滞税、そして消費税

1億5千万円の所得に対する所得税は7,000万円ほどですが、今回のように悪質な無申告の場合は、当時の無申告加算税15%が40%に上がります。

つまり、7,000万円×40%=2,100万円の重加算税が追加されるのです。

これに、納付が何年もされていなかったことに対する延滞税が2,000万円ほど追加されます。

しかも、この延滞税は納付がさらに遅れれば当時の利率で年14.6%加算されていきます。

正しく申告していれば7,000万円前後だった税額が、4,000万円加算されることになります。

そして消費税です。

通常、所得税の計算は、収入から経費を差し引いた残りの所得に課税されます。     

今回は推計課税を行ったので、収入から経費を差し引いたら35%ほどの所得になると推計して所得税の計算を行っています。

しかし、消費税には推計課税という方法が認められていないのです。

しがって、収入4億円から消費税法上の経費(仕入控除といいます)を引くことが認められず、本来なら1億5千万円×当時の税率5%=750万円ほどの消費税が、4億円×当時の税率5%=2,000万円となってしまいました。

そして、消費税にも加算税と延滞税がかかります。

全て合計すると、正しい申告をしていれば7,750万円ほどの税額(節税対策をしていればもっと少なくなっていたでしょう)が、1億5千万円の税額になりました。

ここに住民税も3,000万円ほど加算されます。

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、1億5千万円の所得があると推計された佐藤祐介は、1億5千万円以上の税額を負担するというとんでもない事態になってしまいました。

事件の裏側

とんでもない事態になった佐藤祐介ですが、実は確信犯的に脱税をしていました。

佐藤祐介は、三階建ての豪邸を建てた後に妻と離婚し、財産分与としてこの豪邸と貯金を妻に渡していました(離婚による財産分与には贈与税がかかりません)。

なので、佐藤祐介の口座にはまるで収入が無いかのように現金が残りません。

脱税のシナリオはいたってシンプルでした。

  1. Y社から得た多額の収入を、離婚を偽装した財産分与で元妻に移す
  2. Y社からの仕事の連絡は元妻が受け、Xに伝える
  3. 佐藤祐介は、工具やトラックを元妻の豪邸に隠し、自分自身は部下名義の家に隠れる
  4. 元妻は、税務署からの問い合わせに、元夫のXのことは知らぬ存ぜぬで通す
  5. 佐藤祐介は、税務署が追い始めてからは年間の大半を国外の某リゾート地に潜伏する

その後

多額の課税をされた佐藤祐介は、その後東南アジアの某国に出国したまま行方知れずとなりました。

私は税務調査が仕事だったので、税金を徴収する仕事は別の職員が担当していました。

私の手を離れてしまったので、佐藤祐介のその後を知る手立てはありません。

今ごろ何処でどうしているのでしょうか・・・

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